平成30年6月28日(以下「平成30年度通知」) に「子ども食堂の活動に関する連携・協力の推進及び子ども食堂の運営上留意すべき事項の通知について」の通知が発出されてから、5年が経ちました。当時はまだ、無料又は安価で栄養のある食事や温かな団らんを提供する取組を行う、いわゆる子ども食堂(子どもに限らず、その他の地域住民を含めて対象とする取組を含む)の開設が全国的にも進んでいない状況で、運営自体も地域のボランティア中心に各地で開設されていた傾向もあり、平成30年度通知では地域住民や福祉関係者への子ども食堂に対する関心の薄さや、学校・教育委員会の協力が得られない等の課題が指摘され、子ども食堂の活動に関する理解と協力を促していました。
この度、令和5年9月7日に「保育所等における子ども食堂等の地域づくりに資する取組の実施等について」(以下「令和5年度通知」)の通知が発出されました。5年前の平成30年度通知の発出時とは異なり、保育所や認定こども園等において子ども食堂が実施されている事例もあることを紹介したうえで、改めて、保育所等において、子ども食堂等の地域づくりに資する取組を円滑に取り組めるよう特に留意しておきたい事項が整理されています。
令和5年度通知では保育所は利用している子どもや保護者だけでなく、卒園した子どもや地域住民、保育所の職員や元職員、保育所と関わる地域主体など、地域の関わりあう場であり、子育て世帯や生活困窮世帯への支援だけでなく、地域住民の居場所づくりや地域の賑わい創出等の拠点となり得ること、人口減少地域において、こどもや子育て世帯、その他の若い世代が集う場は保育所等の多機能化の一つの例としてあげられることなどへの期待をふまえ、保育所等における地域づくりに資する取組の意義をまとめています。
また実際の運営に向けて、子ども食堂等による施設の利用や費用の件にも具体的に触れています。
保育所等を活用した子ども食堂等の運営においては、本来の業務に支障を及ぼさない範囲で、施設等の業務時間外や休日を利用した子ども食堂等の実施による一時的な保育所設備の利用、及び定員に空きがある場合において、通常の運営に支障を及ぼさない範囲での一時的な保育所等の設備を使用する場合は一時使用に該当するもので、財産処分の手続きはいらないとされています。
また消耗品費や水道光熱費等の経費について、保育所等の本来の事業に支障を及ぼさない範囲である場合は、保育所等と子ども食堂等の経理の区分することを必要としないこと、また子ども食堂等の規模が大きくなり、保育所等の本来の事業に支障を及ぼすと考えられる場合には、保育所等と子ども食堂等の経理を適切に区分することを必要とし、消耗品や水道光熱費等の経費は、月次や年次で利用人数に応じて案分するなど合理的な方法で算出しわけるなど、具体的な会計の処理も述べられています。ただ保育所については、給食の提供に要する費用が保護者の実費徴収により賄われているため、食材料費については、保育所と子ども食堂で区分して経理することが原則であり、また余剰となった食材料費を活用する場合にも保護者に説明し同意を得ることなど、留意点も整理されています。
子ども食堂の活動を継続的に続けるための課題として、活動場所や関わるスタッフの安定的な確保等があげられます。令和5年通知により、活動場所として、保育所の利用が具体的に明示されたことは、子ども食堂の開設に興味を持たれている法人にとっては、進めるきっかけとなるのではないでしょうか。子ども食堂自体は増加傾向で、さまざまな運営事例が確認できるようにできようになり、また子ども食堂の開設や運営に対し、補助金を出す自治体もでてくるなど、以前より開所・運営しやすい環境が整っています。入所する園児や保護者への支援のほか、地域の子育て家庭に対する支援や地域との連携等も求められる保育所の役割もふまえ、地域の子育て拠点、及び交流拠点としてさらに機能すべく、子ども食堂も運営も一つの選択肢として考えてみてはいかがでしょうか。