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コラム

2023年10月23日

保育施設の「会計」ってどんなもの?

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保育施設の会計・経営コラムを始めます!

皆さん、こんにちは。今月からこのコーナーを担当させていただくことになりました、松本和也と申します。1年間どうぞよろしくお願いいたします。

会計や経営という言葉を聞くと、「難しそうだなあ」と不安になる方もいらっしゃるかも知れません。 これから1年間お読みいただくことで、計算書類に記載された内容かが理解できるような、そしてまた、 保育所や認定こども園でよく生じる疑問点などのヒントになるようなことがお伝えできればと思っています。会計・経営に関する皆さんの理解が深まるように努めますので、どうぞ最終回までお付き合いください。

では早速、会計・経営のお話を始めましょう。

「会計」という言葉の本当の意味

 Aさんの子どものBさんは今年、東京の大学に合格し、4月から一人暮らしを始めることになりました。Aさんは毎月 10 万円の仕送りをすることにしましたが、それだけでは足りないので、Bさんは勉学の合間にアルバイトをすることにしました。AさんはBさんに、毎月末にその月の収入・支出の内容と所持金残額を必ず報告してもらうことにしました。

「会計」という言葉は、中国の「史記」にある“計は会なり”という記述が語源だそうです。「計」は“正確に話すこと”「会」は“増えること”という意味で、「会計」とは“増えたことについて正確に話すこと”という意味です。

つまり「会計」とは、企業や社会福祉法人などの経営体が、期間を区切って、貨幣価値に基づいて記録した内容を、利害関係者に対して正確に説明する行為を意味します。日々のお金の動きを記録する作業のみではなく、その結果を利害関係者に報告することまでを含めて「会計」と呼ぶのです。

Bさんは毎日お小遣い帳を記入するだけでなく、 記載された内容とその結果をAさんに報告しなければ、AさんがBさんの生活の状況を把握することは できません。ですから、Bさんが利害関係者である Aさんに報告して説明することまでを含めて、初めて「会計」と言います。またその時、BさんがAさんに報告すべき内容は、「その月の収入・支出の内容」と「その結果の所持金残額」の2つです。

これは、保育所や認定こども園などを経営する法人でも同じです。

法人が担う「会計」業務

法人にとっての利害関係者は、利用者や取引業者のほかに、所轄庁などの自治体(の長)も含まれます。 したがってこれらの法人では、所轄庁に報告する義務があるだけでなく、利用者や取引業者などに対しても情報を公開する責任があるのは当然のことです。法人が会計を行う必要があるのも、法人に対して情報公開義務が定められているのも、利害関係者に対して説明責任を果たすことが重要な義務の1つであると言えるからなのです。

また法人が報告・説明すべきことは、1年間の活動の内容である年間の収支や損益(これを「経営成績」と言います)と、活動の結果である年度末の残高など(これを「財政状態」と言います)の2つです。この時、経営成績を説明するための書類を「損益計算書」と言い、財政状態を説明するための書類を「貸借対照表」と言います。

社会福祉法人や学校法人の会計では損益という言葉が敬遠され、代わりに「事業活動(収支)計算書」 という名称が用いられます。また、この2つの書類 に加えて「資金収支計算書」が作成されるのも、これらの法人の特徴です。そして、これらの書類をまとめて「計算書類」と呼びます。

 第2回では、計算書類のうちの「貸借対照表」について、そこに示されている内容を見ていくことにしましょう。

まとめ

  1. 活動の内容である年間の収支や損益が「経営成績」
  2. 活動の結果である年度末の状態が「財政状態」
  3. 経営成績を表すのが「損益計算書」、財政状態を表すのが「貸借対照表」
  4. 社福や学法では「損益計算書」の 代わりが「事業活動(収支)計算書」、これらの書類の総称が「計算書類」

 

本コラムは、公益社団法人全国私立保育連盟様が発行している『保育通信』2022年4月~2023年3月号の中で、『いちから学ぶ保育施設の会計・経営』と題して松本和也(取締役・上席研究員)が連載させていただいたものです。保育施設の会計処理や計算書類、経営等につきましてまとめさせていただいておりますので、ご覧ください。

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