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行政情報

2024年12月23日

令和7年度、処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化へ

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第8回子ども・子育て支援等分科会が開催され、令和7年度の保育所・認定こども園等に対する、処遇改善等加算Ⅰ~Ⅲの一本化の検討案と方針が示されました。

まず大枠としては、現行の処遇改善等加算Ⅰ・Ⅱ・Ⅲを一本化し、それを3つに区分されます。
「区分①」基礎分
「区分②」賃金改善分
「区分③」質の向上分

処遇改善等加算の一本化について

こども家庭庁 令和6年度第8回 子ども・子育て支援等分科会資料より。

この検討案で示された新たな情報としては、5点あると考えます。

<1点目> 区分②・③の賃金配分方法の簡略化

区分②・③の「賃金改善分」と「質の向上分」の合計額の1/2以上を、「基本給」または「決まって毎月支払われる手当」により改善する必要があります。

(解説ポイント)

従来は、「処遇改善等加算Ⅱの4万円と5千円の支払いは、何人以上必要」や、「処遇改善等加算Ⅲの2/3以上は基本給等で支払う必要がある」など、ⅠⅡⅢそれぞれに賃金配分のルールが設定されていました。

これが統一されることになります。具体的には、区分②・③の合計額の1/2以上を、月額等で支給することが求められますので、逆に言えば、1/2以下については、賞与・一時金での支払いも可能となります。

たとえば、現在、処遇改善等加算Ⅱ・Ⅲを、基本給や毎月の手当で支払っている場合、これからは区分②・③の全体でとらえて、そのまま月額で支払うのか、あるいは一部を賞与・一時金に振替えるのかなど、職員への最適な配分方法を検討し、見直すことも考えられます。

<2点目> 区分① 基礎分2~12% → 4~14%へ

現在、キャリアパス要件(2%)は、処遇改善等加算Ⅰの「賃金改善要件分」(現状6~7%)の中に含まれていますが、これが「基礎分」(現状、2%~12%)の中に移ります(結果、4%~14%)。長く働く職員の昇給等の原資に充てることも可能となります。

(解説ポイント)

これまでの処遇改善等加算Ⅰの基礎分の加算率は、職員一人あたりの平均経験年数が10年以上であれば、何年であっても12%のままでした。このため、特に11年以上の経験豊かな職員が、多く継続的に勤務されている園では、その昇給原資に見合う処遇改善等加算の支弁がなく、人件費が高くなり、結果、経営を圧迫することもありました。今回、これに充てられる財源が設定されたと言えるかと考えます。

ただし、キャリアパス要件分(2%)は賃金改善分としてすでに職員に支給していますので、今後これがどう整理されていくのか、通知やFAQ等の具体的な内容に注視が必要です。

<3点目> 区分② 処遇改善等加算Ⅱの要件や配分方法を柔軟化

処遇改善等加算Ⅱの要件や配分方法を柔軟化

(解説ポイント)

例えば、経験ある職員が少ない場合には、研修の修了要件を満たしている職員も少なく、結果、現行の処遇改善等加算Ⅱの要件を満たさないことも起こりえます。今回の検討案では、その年度内に修了予定であれば対象とできるため、理論上、新入職員であっても対象とすることが可能となります。

また、施設全体で加算額の対象人数以上の研修修了者を確保することは、現行の制度より多くの修了者が求められるかもしれません。そのため、各職員が、研修修了要件を満たすよう、引き続き、早めの計画的な受講をされることをオススメします。

<4点目> 利用児童数の減少等により経営が悪化した施設の特例措置

『特別事情届出書』(介護分野等と同様の仕組み)に理由等を示し、所轄庁に認められた場合は、賃金水準を下回ることを認めるものとなっています。ただ、一定期間で収支が赤字であり、資金繰りに支障が生じていることを示す必要がある点、園と職員との労使の合意が必要な点など、一定の制約があることもご注意ください。

(解説ポイント)

今回、事業の継続を図るための方策が示されました。子どもの利用数が減り、利用定員を下げられないままで数年経過した園では、資金繰りが厳しくなってきています。

この<4点目>は、子どもの利用者数の大幅な減少等により、経営が悪化し、一定期間にわたって収支が赤字であり、資金繰りに支障が生じている場合が前提となります。そのため、経営状況を事業活動計算書(P/L)ではなく、資金収支計算書(C/F)で見ていくことが重要です。

資金繰りの考え方や分析等については、2024年4・5月の保育ナビの記事や、弊社が各地で行っている研修等でもお話していますので、詳細はそちらをご確認ください。

<5点目> 基準年度の賃金の考え方と、施設独自の改善額の取り扱い

これまで、処遇改善においては、基準年度の「賃金水準」という考え方がありました。これが、今回の検討案では、基準年度は「賃金総額」に変わります。また、介護分野と同じように、初めて処遇改善加算を取得した年度後で、加算等の加算額を超えて実施した賃金改善額(施設独自の改善額)については、翌年度における「前年度の賃金総額」から除外される方向です。これらをまとめると、下図の通りとなり、下図のA、Bについて、比較・確認がされることになります。

施設独自の改善額の取り扱い

こども家庭庁 令和6年度第8回 子ども・子育て支援等分科会資料より。

 

(解説ポイント)

これまで施設独自の改善を行なった場合には、それが前年度の賃金水準となるため、翌年度以降、国から支弁される額以上の賃金支払いが求められることとなっていました。そのような課題に対し、今回の見直しをうまく活用することで、単年度の収入や余剰金の状況、職員の努力など、さまざまな要素を考慮して、年度ごとに柔軟な施設独自の賃金改善がしやすくなります。

これらは2024年12月20日時点で、案段階の内容となっています。令和7年度からの処遇改善等加算の一本化に関して、引き続き皆様に最新の情報を提供していきます。

さいごに

記事の内容や処遇改善等加算の制度に関して、ご相談などがありましたら、お気軽に弊社までご連絡ください。

電話番号 03-6279-0203(代表)
メール  info.fsk@fukushi-soken.com(問い合わせ専用)

文責:株式会社福祉総研 取締役 柳 修二

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