人事院は8月7日、令和7年度(2025年度)の国家公務員給与を引き上げるよう国会と内閣に勧告しました。特に若年層に重点を置きつつ、中堅層以上の職員には、昨年を大幅に上回る引上げ、初任給を約1万2千円引き上げ、全体では平均15,014円(3.62%)の引き上げを勧告しました。また、ボーナス(期末・勤勉手当)は0.05カ月増の4.65カ月分で、月給とボーナス両方のプラス勧告は4年連続となっています。
人事院勧告の推移(2020年度~2025年度)
例年、この提言を受け、政府が決定したうえで、人事院勧告に伴う国家公務員給与改定を踏まえた公定価格の人件費改定(以下、「人勧分」)の検討と単価の遡及改定が行われます。公定価格の遡及決定は例年12月前後になる見込みですが、これがどう反映されるかを考えてみます。
【公定価格】令和7年度の「人勧分」は前年10.7%を超えるのか
月給の引き上げ率が前年2.76%を超える3.62%となると、今年度の「人勧分」が昨年度を超えるのではないか?という印象を持ちますね。実は保育園・認定こども園等の公定価格への影響は必ずしも同じではありません。令和7年度の人事院勧告は、対象人数が多い行政職を含めたこと、若年層に重点をおきつつ、その他の職員も昨年を大幅に上回る引上げ改定を行ったことなどから、より広く改定し分散されました。
そのため、令和7年度(2025年度)の「人勧分」は10.7%を超えないことが予想されます。
それでは解説をしていきます。公定価格は積み上げ方式で積算されています。私立保育所の委託費(公定価格)の積算上に使われている人件費は、国家公務員の俸給表である「福祉職2級29号俸(所長)」、「同2級13号俸(主任)」、「同1級29号俸(保育士)」、「行政職(二)1級21号俸(調理員等)」を用いていますが、令和7年度の上り幅を計算すると、令和6年度のUP額に比べ、やや低くなっています。
90名定員の保育所で必要な職員数を考えると、園長と主任保育士は1名ずつ、調理員が2名の配置、そして、子どもの数に応じて10名程度の保育士が必要となることが想定されます。このように保育士数が園長・主任等より多いため、公定価格への影響は「福祉職1級29号俸(保育士)」の改定額が特に大きく反映することがわかりますね。令和7年度の「福祉職1級29号俸(保育士)」の増額は、前年度の54%程度となっていますので、あくまでも数字上での見込では、令和7年度の公定価格の単価改正は、5.2%(前々年度)を超えたとしても、10.7%(前年度)には届かない程度かと想定されます。
最終的な内容が分かり次第、あらためてお知らせしますが、今後の動向に注目ください。
参考)
「令和7年度における私立保育所の運営に要する費用について」(令和7年8月15日付け通知)
「令和7年度における私立保育所の運営に要する費用について」における所長等の格付けの変更について(令和7年8月15日付け事務連絡)
※令和7年度は、所長等の格付けについて、号俸の切り替えに伴って、以下の変更をしており、俸給月額及び格付けの実質的な変更を行ったものではありません。